このたびの常設展は、アートギャラリーミヤウチの収蔵作品を中心に当館の被爆70周年事業の一環として開催します。近年収蔵した広島を主題とした作品の中から、沖中志帆、笹岡啓子、佐伯勲の作品を出品。
沖中の映像作品は、手の動きだけで目に見えない千羽鶴を折り続ける約32時間の映像。増え続ける折鶴の問題に対し、折るという行為だけで静かに問いかけます。平和記念公園を中心に近年の広島市内を写した笹岡の写真にうつる人影は幽霊のような所在のない人に見えます。佐伯は人間を構成する細胞をモチーフに原爆を想起させる水墨画を描き、本来は核分裂を繰り返し人間を構成していく細胞が、同じく核分裂によりエネルギーを放出する原始爆弾の様相に置き換えられているかのようです。高藤博行は、飼い犬をモチーフに家族の絆の強さを絵筆のタッチにより表現。
寄託作品として展示する諫山元貴の映像作品は、磁器土で作られた椅子の形状をしたモチーフが水の中で無音で崩れていく模様を撮影したものです。平穏な日常の中で、刻々と変化している「何か」を想像させ、今生きてるこの土地が明日にはどうなるかわからない可能性をもイメージさせます。
このたびの、展示作品は、戦争・原爆といった強烈なイメージを与える作品ではないが、静けさの中から何かを訴えるような気迫、変わらず保持していくもの、あるいは見慣れたものが刻々と変化していくものから、目には見えないエネルギーを感じとることができれば幸いです。
赤松和彦、諫山元貴、沖中志帆、佐伯勲、笹岡啓子、髙藤博行 ほか