茶人。広島の地で400年続く武家茶道上田宗箇流の家元付正教授。伝統を踏まえながら、現代的な感性や価値観を反映した茶の湯のスタイルを確立。現在、広島とニューヨークを拠点に茶会の開催や、お稽古を行い、広島の茶の湯文化を発信している。アートギャラリーミヤウチでは、2017年に「Whitescape −はつかいち 冬の茶会」のディレクター・亭主を務めた。
茶の湯Lifeは「茶の湯をもっと身近に」をテーマに、毎回違った視点からわかりやすく茶の湯の魅力を紹介するレクチャーです。
アートギャラリーミヤウチでのレクチャーは「茶の湯の歴史」「茶の湯と建築」「茶の湯と現代アート」を開催します。
第2回目となる今回は、建築から茶の湯をのぞいていきます。利休を始め歴史に名を刻む茶人たちはみな自分の美意識を投影した茶道具を創作し、また見出してきました。その中でも一世一代の大仕事は何といっても茶室創りです。わずか数畳ほどの極小の空間ですが、そこには茶人のプライドが詰まっています。歴史的名室を見ていきながらその魅力と楽しみ方をご紹介いたします。
日頃、茶の湯に馴染みのない方を対象としたレクチャーですので、予備知識なくお楽しみいただけます。ビデオ会議アプリ「ZOOM(ズーム)」を使用しますので、お気軽にご参加ください。
茶人。広島の地で400年続く武家茶道上田宗箇流の家元付正教授。伝統を踏まえながら、現代的な感性や価値観を反映した茶の湯のスタイルを確立。現在、広島とニューヨークを拠点に茶会の開催や、お稽古を行い、広島の茶の湯文化を発信している。アートギャラリーミヤウチでは、2017年に「Whitescape −はつかいち 冬の茶会」のディレクター・亭主を務めた。
日時 | (1) 2020年12月12日(土)19:00-20:30 |
---|---|
対象 | 茶の湯に馴染みのない方、これから始めてみたい方など |
予約締切 | 12月11日(金)まで |
参加費 | 1,500円 / 1回線 |
お申込み・お支払い方法 | 下記のいずれかにてお申込みください。 お支払い方法は、クレジットカード、銀行振込、コンビニ/ATM、Paypal、現金、PayPayがあります。 (1)ギャラリーHPからのお申し込み お支払い方法:クレジットカード
上記ボタンからはJCBが利用できませんので利用されたい方は事前にご連絡ください。Internet Explorerではアクセスできない場合がございます。Chromeを推奨いたします。 (2) 電話・FAX・Eメールからのお申し込み お支払い方法:クレジットカード又は、銀行振込
件名を「茶の湯レクチャー」とし、お名前、人数、連絡の取りやすい電話番号、Eメールアドレス、希望のお支払い方法を下記のいずれか宛にお知らせくだください。折り返しお客様専用のクレジットカード決済フォーム又は振込先情報をお送りいたします。 (3) チケット販売サイトからのお申し込み お支払い方法:クレジットカード、コンビニ/ ATM (ペイジー)、Paypal
Peatixから申し込む (4) ギャラリーでのお申込み お支払い方法:現金、PayPay 前日までにギャラリーにお越しいただける方は直接お申込み、お支払いが可能です。 下記の資料もご確認ください。 |
参加方法・事前準備 |
|
注意事項 |
|
主催 | アートギャラリーミヤウチ |
支援 | 広島市 文化芸術の灯を消さないプロジェクト 本展は、「広島市文化芸術振興臨時支援事業~文化芸術の灯を消さないプロジェクト~」の一環として広島市を拠点とするアーティストの創作活動を紹介してく取り組みの一つして開催しています。新型コロナウイルスの影響で、決まった日時や場所での作品鑑賞は当然にあるものではなく不安定なものであることを目の当たりにしました。そのような状況下でもアーティストの活動は止むわけではなく、展覧会や演奏といった発表の形だけに留まらず制作、研究・実験といった創作活動は個々の時間で続いています。このたびのプログラムは当館をはじめ、広島市内各所、オンラインなど場所や活動期間も各アーティストで異なります。それぞれのアクティビティ(活動や遊び)を通して、作品の孤立性と関係性、展覧会やスペース、そして鑑賞のあり方を問いながらそれらの見直しを試みていきます。 |
オンラインレクチャーレポート
茶の湯 Life -第2回 茶の湯と建築 編
今回は長野さんの「茶と建築は自然に結びつくものではありません。それらがどう結びついて発展してきたか。歴代の茶人がどういう茶室を残していったか。」を掘り下げていこうとものです。
「茶室とは茶事を行うために作られた専用の空間施設」
筆者を含め、茶の湯に馴染みがない人たちにとって「茶会」は聞いたことがあっても「茶事」は耳慣れないかもしれません。「茶事」とは4時間ほどかける正式な茶会を指します。最初の2時間で懐石料理を食べ、後半の2時間でお茶を飲むこの「茶事」は、室内以外の部分、路地や水屋も茶室を作る上で重要です。室内では、床の間、畳、炉が加わり、それが茶室の要素とされています。
また、茶室は「数寄屋」とも呼ばれます。元々は熱中している人がいる場所のことを指す言葉で「わかりやすく言えばオタクに近いニュアンスも含みます。」と笑う長野さん。
茶の道を極める人は専用の特別な空間をしつらえていたのです。
侘び茶の開祖、村田珠光が室町後期に銀閣寺東求堂内に造った同仁斎と呼ばれる書斎が現存する日本最古の茶室と言われています。そこには現代の茶室のスタンダードとなっている要素がたくさん散りばめられていますが、最大のポイントは室内が四畳半であること。
その原点は平安末期から現れる庵(いおり)に端を発します。庵とは隠者と呼ばれる身分の高い人が世俗から離れ住むための自作の隠居小屋でそのサイズが四畳半なのです。四畳半の中心には囲炉裏があり、その周りに仏教、芸術、生活を行う3つのエリアを設け、これが豊かさを残しながら慎ましく生きる最低条件のサイズとして存在していました。また、中国の故事「維摩の方丈」における空間とほぼ同じサイズでもあり、「あらゆるものから解放され、物理的欲求に囚われない」という考え方もあります。多くの茶室の名前に「庵」が付くのはそういった隠者の庵を思わせる慣わしなのです。
続いて長野さんは国宝となっている3つの茶室を紹介してくださいました。
1つ目は、千利休による「待庵」。この空間の写しでお茶を点てた事もある長野さんは「これに並ぶものはない。」と言います。二畳の小さな空間でありながら、それを狭いと感じさせないような様々な工夫が凝らされています。入ると広く感じる感覚のギャップを発生させ、土壁で落ち着くような場所として設けられています。さらに薄暗い室内は目の前の道具と相手のみに集中するような効果もありました。
利休の死後、織田有楽が造った茶室が2つ目の、「如庵」です。待庵より少し広い三畳半のその茶室は、有楽が凄まじいセンスの持ち主だということを感じさせる場所。「空間にちょっとした変化をつけることにより、独特な間合いや陰影の強弱を巧みに演出しています」という長野さんの1番のおすすめポイントは窓。有楽窓と呼ばれる細竹を均一に配置したもので、差し込む光がキラキラとして水面のように見える作りが特徴です。独特なその感性は、商人の茶ではなく武家の茶を追求した空間でもありました。
最後に紹介するのは小堀遠州の「密庵」。遠州は武士でありながら風流人でした。藤原定家に憧れていた優美な感覚を持っていて、空間も明るく造られています。特徴的なのは床が二つあるところ。密庵は禅僧の名前から取られており、一つの床は彼の軸だけを掛ける場所となっています。遠州は、平安時代の優美な世界を茶に取り込むことで新しい茶の空間を誕生させたのでした。長野さんは「3名の中で現代人のモダンな感覚に一番フィットするのは遠州だと思います」と言います。
共通するのは、形式に囚われない自由な世界・手狭さを感じさせないこと。自然素材を取り入れ、シンメトリーを崩すことで空間の狭さが落ち着きに変わる、という逆の真理が働くのが大きな特徴で、そこが茶人の腕の見せ所だと締めくくられました。
3つの茶室は、例えるなら利休が真理を追求して削ぎ落とすアーティスト、有楽斎が空間を洗練させていく前衛的なデザイナー、遠州が過去の意匠も取り入れて心地よい空間に仕上げていく建築家のような印象を受けました。小さな空間にそれぞれの思想が詰まった茶室、五感を使って茶の湯を味わい、そこで行われるコミュニケーションの醍醐味をお裾分けしていただいたようなトークとなりました。
次回はいよいよ最後、「茶の湯と現代アート」編です。
2021年2月2日
平石もも / AGmアンバサダー・元横川創苑マネージャー