茶人。広島の地で400年続く武家茶道上田宗箇流の家元付正教授。伝統を踏まえながら、現代的な感性や価値観を反映した茶の湯のスタイルを確立。現在、広島とニューヨークを拠点に茶会の開催や、お稽古を行い、広島の茶の湯文化を発信している。アートギャラリーミヤウチでは、2017年に「Whitescape −はつかいち 冬の茶会」のディレクター・亭主を務めた。
茶の湯Lifeは「茶の湯をもっと身近に」をテーマに、毎回違った視点からわかりやすく茶の湯の魅力を紹介するレクチャーです。アートギャラリーミヤウチでのレクチャーは「茶の湯の歴史」「茶の湯と建築」「茶の湯と現代アート」を開催します。
第3回目となる今回は、現代アートの視点から茶の湯を見ていきます。近年、杉本博司、森万里子、蔡國強、リクリット・ティラバーニャ、トム・サックスなど世界的に活躍する現代アーティストが茶室を創り、茶会を行っています。彼らの作品を参照しながら、400年前に大成した前衛芸術である茶の湯が、現代アートとしてどう展開されているのかを見ていきたいと思います。
日頃、茶の湯に馴染みのない方を対象としたレクチャーですので、予備知識なくお楽しみいただけます。ビデオ会議アプリ「ZOOM(ズーム)」を使用しますので、お気軽にご参加ください。
Whitescape −はつかいち 冬の茶会(アートギャラリーミヤウチ、2017)
茶人。広島の地で400年続く武家茶道上田宗箇流の家元付正教授。伝統を踏まえながら、現代的な感性や価値観を反映した茶の湯のスタイルを確立。現在、広島とニューヨークを拠点に茶会の開催や、お稽古を行い、広島の茶の湯文化を発信している。アートギャラリーミヤウチでは、2017年に「Whitescape −はつかいち 冬の茶会」のディレクター・亭主を務めた。
日時 | (1) 2021年1月9日(土)19:00-20:30 |
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対象 | 茶の湯に馴染みのない方、これから始めてみたい方など |
予約締切 | 1月8日(金)まで |
参加費 | 1,500円 / 1回線 |
お申込み・お支払い方法 | 下記のいずれかにてお申込みください。 お支払い方法は、クレジットカード、銀行振込、コンビニ/ATM、Paypal、現金、PayPayがあります。 (1)ギャラリーHPからのお申し込み お支払い方法:クレジットカード
上記ボタンからはJCBが利用できませんので利用されたい方は事前にご連絡ください。Internet Explorerではアクセスできない場合がございます。Chromeを推奨いたします。 (2) 電話・FAX・Eメールからのお申し込み お支払い方法:クレジットカード又は、銀行振込
件名を「茶の湯レクチャー」とし、お名前、人数、連絡の取りやすい電話番号、Eメールアドレス、希望のお支払い方法を下記のいずれか宛にお知らせくだください。折り返しお客様専用のクレジットカード決済フォーム又は振込先情報をお送りいたします。 (3) チケット販売サイトからのお申し込み お支払い方法:クレジットカード、コンビニ/ ATM (ペイジー)、Paypal
Peatixから申し込む (4) ギャラリーでのお申込み お支払い方法:現金、PayPay 前日までにギャラリーにお越しいただける方は直接お申込み、お支払いが可能です。 下記の資料もご確認ください。 |
参加方法・事前準備 |
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注意事項 |
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主催 | アートギャラリーミヤウチ |
支援 | 広島市 文化芸術の灯を消さないプロジェクト 本展は、「広島市文化芸術振興臨時支援事業~文化芸術の灯を消さないプロジェクト~」の一環として広島市を拠点とするアーティストの創作活動を紹介してく取り組みの一つして開催しています。新型コロナウイルスの影響で、決まった日時や場所での作品鑑賞は当然にあるものではなく不安定なものであることを目の当たりにしました。そのような状況下でもアーティストの活動は止むわけではなく、展覧会や演奏といった発表の形だけに留まらず制作、研究・実験といった創作活動は個々の時間で続いています。このたびのプログラムは当館をはじめ、広島市内各所、オンラインなど場所や活動期間も各アーティストで異なります。それぞれのアクティビティ(活動や遊び)を通して、作品の孤立性と関係性、展覧会やスペース、そして鑑賞のあり方を問いながらそれらの見直しを試みていきます。 |
「茶の湯をもっと身近に」をテーマに、毎回違った視点からわかりやすく茶の湯の魅力を紹介するレクチャーシリーズ・茶の湯Life。
現在、広島・ニューヨークを拠点に茶会の開催や、お稽古を行い、広島の茶の湯文化を発信している武家茶道上田宗箇流の家元付正教授の長野佳嗣さんが講師を務めます。
茶の湯に馴染みのない方を対象にしたこのレクチャーシリーズは全3回。
最後は「茶の湯と現代アート編」です。
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冒頭、長野さんは「これまで茶の湯の歴史やバックグラウンドを話すきっかけが少なかったので、いい機会となりました」とこのシリーズを振り返りました。
鎌倉時代に伝わった茶の湯は数百年に一度の転換期を経ながら現代へ受け継がれていきました。そして現在。現代アートと茶の湯が交わることで新たな転換期につながりそうな事例が登場しています。長野さんは今回5人の現代アーティストの取り組みを紹介してくださいました。
1人目は、時間をテーマに写真の中に永遠とも思える時間を定着させている杉本博司。ニューヨークにある彼のスタジオを改修して作った茶室にはアーティストならではと言える視点の仕掛けがありました。その茶室は開閉式になっていて、茶会の様子が外からも鑑賞出来るように作られています。「茶人の立場からこれを作るのは難しい。茶室の外から“鑑賞する”という舞台装置のような設計は新しい視点。」。2014年には、そのコンセプトをさらに推し進めた全面ガラス張りの茶室をヴェネチアにて発表。とてもインパクトのあるものになっています。
2人目は長野さんイチオシのトム・サックス。DIY的な手法で宇宙をテーマにした作品で知られる作家です。手に入れたいものを自分で制作するという彼のユニークな作風を、長野さんは「現代的な侘びの美」と称し、不完全なものの中に美を見出だし出来上がっていった茶の湯の侘びの感性に通じると言います。NYでお茶を学んだトムは、2016年にNYにあるイサム・ノグチ美術館にて「Tea Ceremony」という茶の湯のインスタレーションを発表。そこにはアメリカ式の現代数寄屋とも言える茶室が出来上がっていました。宇宙空間でお茶を点てることを想定したという彼の茶の世界は、宇宙服でも茶が点てられるように電動式の茶筅が登場するなど随所に工夫がされています。宇宙で茶会を開くとこうなるのか!という新しい次元の視点によって逆に伝統的な茶の湯の形式や精神性を客観視することにもつながりましたと言います。
3人目は、日本人のアイデンティティーに根差した宗教観や精神性を内包した作品で知られる森万里子。二十代前半に渡英したことをきっかけに日本がいかに独特な国か気付いたそうです。そこから茶の湯を学び、東京にある自身のオフィスに茶室を構えます。彼女の世界観を基調としたその空間は、床を造らず付書院の形式を用いている点が印象的です。加えて普通の茶室と大きく違うのは対称性があること。不完全の美を大切にする茶室は普通、非対称に作られますが、対称性をとることでこれまでの茶室とは違った雰囲気に仕上がっていると長野さんは言います。
4人目はリクリット・ティラバーニャ。パッタイやカレーを振る舞うパフォーマンスを行う彼は、作品そのものより、そこから生み出される関係性を重視しています。これは茶の湯とも共通しています。人と人との心の共鳴、空間との関係性をタイ人らしく、そして現代美術作家らしいやり方で挑戦しているのです。そんな彼がシンガポールに作った茶室は四畳半の黒いお茶室。炉の釜の代わりにスイカを使うなど、暑い国ならではの奇抜なアレンジに長野さんは衝撃を受けたそうです。彼は茶の湯を日本的なものを表現するツールではなく、コミュニケーションをするための空間的なものとして捉えているのです。
5人目は、破壊のイメージがある爆薬を、創造の原動力としてポジティブな使い方で作品制作に用いる蔡國強。日本在住期間も長かった蔡は、NYのスタジオに茶室を作ります。その茶室は日常における「空白のような場所」として作られたもの。日々多忙を極めるアーティスト業務の中で、全てのことから距離を置くための場所だと言います。そこではお茶をたてるだけではなく瞑想をしたり、横になったり、という使い方もしているそう。原点に帰り、新たな想像力が生み出される場所なのです。
現在、日本の伝統的な茶の湯の世界は、茶道人口の減少、生活の西欧化、茶の湯の社会的意義の消失などの課題を抱えており、衰退が続いています。今回紹介した5人のアーティストは全員海外在住で、外の視点から日本の茶の湯を見つめ、新たな視点で茶の湯のもつ魅力や価値を提示しています。そこに茶の湯のさらなる発展へのヒントが詰まっています。
この日は最終回ということもあり、視聴者からいつもに増して熱いメッセージが飛び交い、画面越しでも白熱しているのが伝わってきました。
3回のトークを通して、茶の湯がより近くになったのと同時に、その世界の奥深さとそこにまつわる様々な人たちの試みから、ものづくり全体への視野も広げてもらったようなシリーズでした。
長野さんは2月末にはオンライン茶会「夜咄」を開催されましたが、今後の活動も是非ご注目ください。
2021年2月28日
平石もも / AGmアンバサダー・元横川創苑マネージャー