トーク「アートの起源 先が見えない時こそ何を見る?」

2020年11月21日(土)19:00-21:30

記憶や歴史をテーマに写真作品を制作する坂本淳と、考古学博士(洞窟壁画)の坂本崇によるオンライントークイベント

コロナ禍で先が見えない状況のなか、思い切り過去を振り返ってみませんか?例えば人類最古の絵画とされる洞窟壁画を描いた人たちが生きた過酷な氷河期、その時代を生き抜いた人達はどのような世界を見ていたのでしょうか?アートの起源という古すぎる時代の話が、様々な問題で揺れる現在と、この先を見すえる術を考える機会になるかもしれません。
ご自宅などからお気軽にご参加ください。

「今、読めない先を見るためには、
 振り返らなければならない時がきたのだ」

これはいまから10年ほど前に写真家の杉本博司が発したメッセージです。今回はこの言葉を引き受け、最新の考古学的資料と知見をもとに、「起源に何があったのか」を考察しながら「なぜ起源を振り返る必要があるのか」を議論します。
坂本淳、坂本崇。

起源のための習作 / 坂本淳

坂本淳 / Sakamoto Jun

写真家、広島市在住。1979年東広島市生まれ。2003年須田一政氏から写真を学び大阪芸術大学卒業。2012年映像制作会社勤務を経てフリーランスに。2014年佐藤辰美氏の助言により作家活動を8年ぶりに再開。以降、記憶を主題とする作品を制作中。主な個展に「Continue」Hirose Collection, 広島, 2019、「Variations」Gallery G, 広島, 2019、「AUG.6,2016(Chewing Gum and Chocolate)」Gallery Node, 広島, 2016、「広島へ行く」Gallery G, 広島, 2014。

坂本崇 / Sakamoto Takashi

考古学博士。大阪芸術大学芸術計画学科で美術史やキュレーションを学んだ後、芸術の起源に興味を持ち渡英。ダラム大学大学院考古学科で先史芸術を研究する。専攻は後期旧石器時代の洞窟壁画。現代美術におけるインスタレーションアートの観点から、洞窟壁画をインターアクティブ装置として解釈しようと試みている。2015年にロンドンで開催された科学イベント「New Scientist Live」では世界最古の画法を実演・紹介するなど、公開講座やワークショップにも積極的に参加している。アンティーク収集家でもあり、過去には骨董史をめぐる座談会も主催。新旧を問わず芸術表現から人間性を読み取るエキスパートとして幅広く活動している。
二人で開催したこれまでの座談会に「古すぎて未来-洞窟壁画に関するいくつかの話(2019)」、「現代ざっくり骨董史-民芸から新しい骨董まで(2018)」がある。

基本情報

日時

2020年11月21日(土)19:00-21:30
入室・受付 18:45〜 開始 19:00〜(休憩あり)
*途中入退場可。質疑応答などで最長22:00までの開催になる場合がございます。
募集を締め切りました

対象

どなたでも

定員

15名

予約締切

ギャラリーHPからのお申し込みの場合は当日21日(土)15:00まで

参加費

1,000円 / 1回線
 ご家族など同じ端末から参加希望の場合は1回線分です。

お申込み・お支払い方法

下記のいずれかにてお申込みください。 お支払い方法は、クレジットカード、銀行振込、コンビニ/ATM、Paypal、現金、PayPayがあります。


(1)ギャラリーHPからのお申し込み
お支払い方法:クレジットカード

上記の各日時の「チケットを申し込む」ボタンをクリック。インターネットのブラウザが開き決済画面が出ます。Eメールアドレス、電話番号、氏名、カードの番号、有効期限、セキュリティコード(カード裏面署名欄の番号下3桁)、居住地の郵便番号をご入力いただき、「今すぐ支払う」ボタンをクリック。自動返信メールが届きますとお申し込み完了です。自動メールは現在の設定上、一部の単語が英語表記となりますことをご了承ください。
は事前にご連絡ください。Internet Explorerではアクセスできない場合がございます。Chromeを推奨いたします。


(2) 電話・FAX・Eメールからのお申し込み
お支払い方法:クレジットカード又は、銀行振込

件名を「アートの起源」とし、お名前、人数、連絡の取りやすい電話番号、Eメールアドレス、希望のお支払い方法を下記のいずれか宛にお知らせくだください。折り返しお客様専用のクレジットカード決済フォーム又は振込先情報をお送りいたします。
電話:0829-30-8511(火・水曜を除く9:30-17:00まで)
FAX:0829-39-8931
Eメール: agm@miyauchiaf.or.jp
銀行振込先は広島銀行です。(振込手数料はお客様にご負担いただきます)。


(3) チケット販売サイト(Peatix)からのお申し込み
お支払い方法:クレジットカード、コンビニ/ ATM (ペイジー)、Paypal

Peatixから申し込む


(4) ギャラリーでのお申込み
お支払い方法:現金、PayPay

前日までにギャラリーにお越しいただける方は直接お申込み、お支払いが可能です。

下記の資料もご確認ください。

参加方法・事前準備
  • ご予約、お支払いが完了された方には、開催日3日前頃に当日アクセスしていただく専用のURLをお送りいたします。
  • 事前にzoomアプリをインストールし、起動などのご確認をお願いいたします。 zoomを使用いただくためにはマイクとWebカメラが搭載されたパソコン、タブレットが必要です。
    ・パソコンの方は「https://zoom.us/download」にアクセスし、一番上の「ダウンロード」からインストールしてください。頻繁に使われる場合はアカウント作成をすると便利です。
    ・タブレットの方はアプリストアからインストールしてください。
  • 当日は受付時間になりましたらURLにアクセス可能です。開始時間5分前までにはアクセスをお願いします。
  • 参加者側の画面の表示/非表示は任意です。
  • その他詳細はご予約完了後にメールなどでお伝えいたします。
注意事項
  • インターネット回線を利用いたしますので、できる限りご利用回線の負荷を少なくした状態・環境でのご視聴をお願いいたします。
  • 当日、事業の報告書作成や広報のために配信録画と参加風景を撮影させていただきます。顔出しが困る方は事前にカメラの非表示を設定してください。
  • 参加者による配信の録画をはじめ、動画サイトなどへの無断転載・共有、参加URLの譲渡を禁止いたします。
主催

アートギャラリーミヤウチ

支援

広島市 文化芸術の灯を消さないプロジェクト

本展は、「広島市文化芸術振興臨時支援事業~文化芸術の灯を消さないプロジェクト~」の一環として広島市を拠点とするアーティストの創作活動を紹介してく取り組みの一つして開催しています。新型コロナウイルスの影響で、決まった日時や場所での作品鑑賞は当然にあるものではなく不安定なものであることを目の当たりにしました。そのような状況下でもアーティストの活動は止むわけではなく、展覧会や演奏といった発表の形だけに留まらず制作、研究・実験といった創作活動は個々の時間で続いています。このたびのプログラムは当館をはじめ、広島市内各所、オンラインなど場所や活動期間も各アーティストで異なります。それぞれのアクティビティ(活動や遊び)を通して、作品の孤立性と関係性、展覧会やスペース、そして鑑賞のあり方を問いながらそれらの見直しを試みていきます。

開催レポート

広島を拠点に活動する写真家の坂本淳さんと、考古学者で現在はイタリア在住の坂本崇さんによるトークイベントです。
二人は実の兄弟で、アンティークスタンドという骨董を扱うショップも運営中。

「人間がものを作り始めて100万年以上経って、さまざまな積み上げを経て作り上げたものが洞窟壁画。その話も面白いけれど、それよりもっと古い起源を探ってみたい」と語る淳さん。杉本博司の展覧会「アートの起源」をもとに、崇さんの研究する最新の考古学資料をもとに考えられうる起源を探ります。

1. 2つのアートの定義
弟の崇さんも大阪芸大出身です。「美術大学には起源を教える授業がない。考古学資料を現代に持ち帰るようなトークになれば」とお話しされ、スタートしました。
その前にアートの定義です。
美であり、共感、コミュニケーション、シンボリズムなどのワードから人間性やあるいはその原点など広義に捉えることができますが、今回のトークではイメージメイキングとしてのニュアンスで探ることとなります。定義は2つ。
1つ目は「形を作る能力」。起点から終点までを想像する力。
2つ目は「イメージメイキングや、立体造形を通して意味や情報を生成・共有する行為」

2. 最初期のテクノロジー
ではまず「作る」起源はどこからあったのでしょうか。270万年前のオルドワン石器では石をそのまま使っていました。石を「使う」ことはチンパンジーも石を「使って」いますが、石器を作ることはしていません。作る行為はどこからかというと約170年前のアシュール石器が革命だったと崇さんは言います。左右対象に削られた石器は”デザイン”の要素が見て取れるそうです。
道具を作る、というのは制作開始時に完成形をイメージする必要性があります。例えば槍を投げる時にその軌道を予測することもそうです。ここで思考することが増え、道具を介することにより、主体と自然との直接性が薄れると考えます。崇さんは「高度な道具使用により、自然から人間が剥離し、その剥離を解消するためにアートが生まれた」と仮説付けました。
3. 美意識と「所有」
なぜ欲しいと思うのか?美意識と所有は関連があるのではないでしょうか。300万年前のマカパンスガットの小石は自然の石が顔のように見え、オブジェ的なものとして存在していたようです。また、50万年前のアシュール石器は貝殻の形を中央に残した作り方をしていてデザイン的な部分とオブジェ的な部分の融合ではないかと考えられています。
装飾品というのはテクノロジーと美意識の進化の並行性があったのではないか。淳さんは「自然との剥離を埋める行為が、自然を身につけることになっている」と読みます。また、それらを所有することがステータスとなり、社会制度を作っているのです。

4. イメージメイキング:抽象と表象
チンパンジーは絵をコピーすることはできても自分から描きはじめることはできません。アートの定義2における最古のアートは7万年前の石の断面に赤い塗料でジグザグの幾何学模様があるレッドウォーカーの断片ではないかと言います。淳さんも気に入っているというそれは、内在光を描いたのか、偏頭痛の時に見えると言われるオーラなのか、崇さんは「収集した貝殻を観察したのでは」とも読み取ります。そういった記号性を生み出せることが「人間は知識と経験が保存できる生き物で、文化はその蓄積によるものだ」と2人は言います。
また、最古の表象イメージとして4万年前のネガティブハンドと呼ばれる壁画を紹介し、これを暗い洞窟で作ることは何かのコンセプトがあったのでは、と推測しています。

5. コミュニケーションとしてのアート
人が進化し、増えた人口を繋ぐ物としてアートが進化したのではないか。アートの利点は象徴化することにより意味・情報を生成し、情報を圧縮・保存でき共有できることにあるのではないかと言います。「共有することは部族同士の摩擦を生まないのではないか」
3万5千年前ごろのライオンマンと呼ばれる象牙の小さな半身半獣の石像は説明責任(コンセプト)があるだろう、と二人は言います。しかし逆に仕留めた動物を頭にかぶった状態でもあったら現実でもあるから説明責任ないかもしれない側面もある、とも言います。これを理解するには他者と何か共有する情報がないと成り立たないのです。
また、これらが小さくポータブルになることにより、所有を促し、デフォルメ、機能性重視、シンボリックに変化。完成度も高く、多様になっていきます。二人はこれを自然との乖離を意識すると絶望する。絶望しないために完成度を上げていくのではないかと考えています。

6. なぜ今アートの起源を語るのか
これらの話を踏まえたこのテーマですが、時間も枠を超えていたので、質疑応答も交えてのまとめとなりました。「起源がどこに結びつくのかを知っているかどうかで、絶望することなく生きる方法があるのではないか。イメージメイキングの前、アートと呼ばれる前が複雑化しているが、その中身を知ることが物を作る上で必要な前提なのではないか」と淳さんは言います。
このテーマを考えることは「人間とは何か」を考えることとイコールな気がする、という参加者の方のコメントが印象的でした。
マカパンスガットの小石のようないわゆる「見立て」のかたちを読み取って残していた、という説は人間が独自に備えた感覚であるのが窺えます。
長い時間行っていた中でもアフタートークまでかなりの人数が残って聞いていたのは、やはりそれが美術の側面からだけでは触れられないような重要なテーマだったからではないでしょうか。前後編として2回に分けてもよかったような、濃密な情報量のトークイベントとなりました。

2021年1月10日
平石もも / AGmアンバサダー・元横川創苑マネージャー