終了

児玉香織|方眼紙と線

2015年6月6日(土)-7月4日(土)

児玉香織は、これまで一貫して方眼紙にペンを走らせる線画を描いてきましたが、その強烈な密度や独特の構図は見るものを魅了します。画面は一見コンピュータ処理をされたような表層でありながら、実際は鮮やかで視覚的にも美味しそうな料理をモチーフにしており、それらを下書きなしに色も影も加えることなく線のみで描いています。

一般的に方眼紙は、グラフや統計など正確な数値を視覚化するために用いられますが、児玉は方眼紙の用途には従わず、料理本に写る盛り付けられた食材の輪郭を時にマス目からはみ出しながらも淡々と正確に写し取っていきます。その作業は、モチーフのイメージを脚色、あるいは何らかのイメージに帰属させることなく、ある意味写実表現とも言えるのではないでしょうか。

しかし出来上がる画面は、不安定な構図も相まって想定外の図として立ち現れ、わたしたちのイメージの依り何処を狂わすようでもあります。一方で、特定の価値観に縛られない自由さを手に入れた現在、隠された真実に直面してもなお、時が経つにつれ特異なこととして捉えられないこともあります。児玉が描く方眼紙の規則から外れ、密度がありながらも空虚な線の集合体がつくり出す不安定な構図は、次第に画面を支配してくるようにも見えます。それは、想定外な出来事が起こってもなお、徐々にその状況に順応していく様を暗示しているのかもしれません。

東京近郊での発表が多い中、広島での展示は約6年ぶりとなる今回の個展。名刺サイズからB1サイズまで、新作、過去作を合わせ総数100点以上を予定しています。これまでの一貫した取り組みを是非ご覧ください。

参考作品

方眼紙と線, 2015, 182×257 mm
方眼紙と線, 2014, 182×257 mm
方眼紙と線, 2010, 182×257 mm 
方眼紙と線, 2015, 240×240 mm

児玉香織 / Kaori KODAMA

1986年広島生まれ。2009年尾道大学芸術文化学部美術学科卒業。2009年にラディウム−レントゲンヴェルケ(東京)で開催された「メークリヒカイト」での出品で注目を集め、2010年には現代美術のコレクターとして知られる精神科医・高橋龍太郎氏のコレクションに収められる。近年の主な展覧会に、個展「方眼紙と線」(ラディウム-レントゲンヴェルケ、東京、2012)、「韜晦〜巧術其之肆」(スパイラルガーデン、東京、2013)、「巧術・デパート・リミックス・其之貳」(新宿高島屋、東京、2014)、「縹渺〜巧術其之伍」(スパイラルガーデン、東京、2014)。その他、国内外のアートフェアにも出品。現在、広島在住。

基本情報

会期

2015年6月6日(土)-7月4日(土)

開館時間

11:00-18:00 [入館は閉館30分前まで]

会場

アートギャラリーミヤウチ 2F展示室

休館日

火・水曜日

観覧料

無料

主催

公益財団法人みやうち芸術文化振興財団・アートギャラリーミヤウチ

協力

株式会社レントゲンヴェルケ

開催レポート

キュレーターズノート
児玉香織「lines, graphpaper|方眼紙と線」、「ゲンビどこでも企画公募2015展」
角奈緒子(広島市現代美術館)
『artscape』2015年06月15日号
http://artscape.jp/report/curator/10112094_1634.html