終了

小平篤乃生|烏巡り

2018年11月3日(土・祝)-2019年1月14日(月・祝)

遠く離れた宮島と熊野。この二つの地をカラスが巡る。

広島出身の小平篤乃生(1979-)は、現在フランスを拠点とし「あらゆるメディアや歴史は緩やかに絶え間なく繋がっている」という考えのもと、五感を喚起させる体感的な場と作品をつくり続けています。青年期から海外で暮らす小平は、特に日本の自然崇拝と地場産業に関心をもち、考古学とは別の視点や解釈からの歴史を提示し、国家が成立する前の人間の営みや自然との共存を探し求めてきました。 近年広島県の宮島と和歌山県の熊野での制作を経験してきたなかで、偶然にも二つの土地をカラスが巡るという伝承を知ります。本展では、このカラスの行動を自然循環の象徴と見立てた新作ヴィデオを中心に、それぞれの土地で制作したオブジェなどによる大規模なインスタレーションで構成します。カラスが巡ることにより、宮島のしゃもじづくり、熊野の煤づくりといった地場産業と山岳信仰との関係性を探り、ひいては私たちのアイデンティティまで巡っていきます。

展示はギャラリー全体を使用し、ヴィデオ、音、写真、オブジェなどを組み合わせたインスタレーションにより、可視化できないエネルギーや歴史を空間全体で体感する構成となります。

KOHIRA Atsunobu: CROW CYCLE

新作「烏巡り」について

2015 年独自の墨を制作するために、熊野古道の側にある煤を生成する産業を取材した。今では、植物性油 を燃やし煤を作っているが、昔は地域の植物を燃やし煤を取り出していた。山の間伐と二酸化炭素の供給。八咫烏(ヤタガラス) と同じ黒い煤を作る産業は、この山奥のエコシステムに何らかの関連があるのではなかろうか。一方、原始林が今でも残る神の島、宮島(厳島)。厳島神社の起源をさかのぼると、カラスが神の鎮座すべき場所を導いている。弥山の山頂に鎮座する巨石群、シャモジやお盆など木工産業が根付くこの島もまた古層の山岳信仰が関係しているのではなかろうか。このふたつの土地を巡るカラスの伝承を自然循環の象徴に見立て、ドローンで実際のカラスを追跡するビデオ作品を制作する。伝承では宮島に生息するカラスが、熊野へ帰るという。その軌跡を辿るようにドローンでカラスを撮影する。この展覧会は、故郷である広島から離れてから初めて地元にフォーカスを当てた作品となる。この展覧会を通して、自らのアイデンティティを再認識したい。(小平篤乃生)

出品作品

※参考作品画像も含まれます

全ての写真提供:YUMIKO CHIBA ASSOCIATES

(c) Atsunobu Kohira, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

フライヤーイメージ
"Graphite sculpture 3.0"(2015)シャープペンシルの芯、石炭、糊
"Graphite sculpture 2.0"(2015)シャープペンシルの芯、ドライフラワー、糊
"Kodo 古道"(2017)鹿の頭蓋骨、棒状の墨
"Coalscape 14"(2016)ピエゾグラフィー  supported by ARTU
"Carbon variation N°1 & N°2"(2017)カーボンインク、ランプ

小平篤乃生 / KOHIRA Atsunobu

1979年広島に生まれ、青年期をスイスで過ごす。パリ国立高等美術大学時代にジュゼッペ・ペノーネ氏に師事し、ル・フレノア国立現代アートスタジオでメディアアートを習得。2011年にエルメス財団によるアーティストインレジデンスに参加、2012年には文化庁海外研修生として音の研究を行い、現在は、パリを拠点にヨーロッパでさまざまなプロジェクトに参加、活動している。主な個展に、「ATSUNOBU KOHIRA」(The Chimney、ニューヨーク、2018)、「Carbon Variation N°1」(ユミコチバアソシエイツ、東京、2017)、「Coalscape 石炭のインキ」(KG+、京都、2017)、「Outretemps」(Galerie Maubert、パリ、2016)、「Ouverture de Bombyx Mori」(ヨーロッパ写真美術館、パリ、2013)など。

関連作品

小平は花士・珠寳、陶芸家・西井久芳とコラボレーションし、宮島の自然の恵みで芸術作品を作り上げる企画「島の器」を同時進行しており、このたび厳島神社に於いて完成した器とともに珠寳が献花(11月13日15:00〜)を行います。

花士・珠寳(はなのふ・しゅほう)

2004年から14年まで、京都の慈照寺(銀閣寺)花方を務め、境内禅堂に開場された「慈照寺研修道場」にて、いけばなを担当。主にフランスや香港で国際文化交流プログラムを担当し、国や民間の文化施設や団体などと交流。音楽や現代アート、工芸、建築などの分野の国内外のクリエーターとも協働。2015 年に独立し、草木に仕える花士 ( はなのふ ) として、大自然や神仏、時、ひと、場所に花を献ずるなど、花をすることを続けている。同年、青蓮舎花朋の會を設立。

西井久芳(にしいひさよし)

1980 年京都に生まれる。嵯峨芸術短期大学部で陶芸、京都府立陶工高等技術専門校で職人の技術を学ぶ。その後、陶芸家 鈴木五郎氏に師事。2008 年に大阪府豊能郡にアトリエを構え独立。銀閣寺研修道場の花器、明治学院大学の茶室(明霄舎)の蹲、滋賀県陶芸でのレジデンスや多岐にわたるクリエイターとのコラボレーションを手がける。現在、滋賀県信楽町の多羅尾山中にアトリエを移し、地質学者のようなフィールドワークをベースに土地の原料を採取し焼き物を作る。

基本情報

会期

2018年11月3日(土・祝)-2019年1月14日(月・祝)

開館時間

11:00-18:00(最終入館は17:30)

会場

アートギャラリーミヤウチ 2・3F展示室

休館日

火・水曜日、12/30-1/3(但し11/14はイベントのため開館)

観覧料

500円(400円)
(  )内は学生、10名以上の団体料金。高校生以下または18歳未満・各種障害者手帳をお持ちの方は無料

主催

公益財団法人みやうち芸術文化振興財団

協力

YUMIKO CHIBA ASSOCIATES、包ヶ浦自然公園管理センター

後援

廿日市市教育委員会