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テレポーティング・ランドスケープ

2017年3月11日(土)-5月21日(日)

過去と未来、此処と彼処のあいだで絶えず振動する現代の風景

ランドスケープという言葉は、日本ではしばしば「風景」や「景観」といった意味で使われますが、もともとは「風景画」を指す言葉でした。すなわち、画家という主体が、対象となる空間を選択・解釈・再構成し、絵画という人工物をつくり上げる行為を指していたのです。
ひるがえって現代では、テレビやパソコン、タブレット、スマートフォンといった無数のディスプレイが、様々な時空を超えた風景を届け、私たちを取り巻く空間を何層にも多重化すると同時に、せわしない視点の切り替えを要求します。現代においては、ランドスケープの対象となる空間も、主体としての人間も、かつてなく揺らいでいるのではないでしょうか。

本展では、この「ランドスケープ」という言葉の本来の用法に、あるいはその不可能性に立ち返りつつ、絵画というメディウムにとらわれない、新たな「ランドスケープ」の在り方を探求します。揺らぐ空間と人間、その揺らぎの感覚を矯正するのではなく、逆に極端にまで押し進めることによって、観る者を時空間の彼方へと瞬間的に拉し去ること。このような「風景画」を、私たちは「テレポーティング・ランドスケープ」と名づけました。
ここにあるはずのないもの。出会うはずのない人々。起こるはずのない出来事。各作家が提示するテレポーティング・ランドスケープは、過去と未来、此処と彼処のあいだで絶えず振動する現代の風景を、不安と予兆に満ちた可能性の場として描き出します。瞬間移動する/させる風景画を前にして、人はそこに何を見ようとするのでしょうか。

出品作家一同

出品作家

諫山元貴、小田原のどか、小宮太郎、丸橋光生
*多くの作品が、同シリーズの再制作または新作をを出品予定です。

諫山元貴《screen》2017 / 映像
諫山元貴《母と子》2017 / 映像
小田原のどか《↓》 2015 ネオン管 制作:(株)ユン美工 H4800 mm(矢型標柱の実際のサイズ)
Photo by Kazuhiro Uchida (Life Market Co., Ltd.) 提供:広島市現代美術館   
小宮太郎《Veneer [ceilings]》 2013 木、ライト、塗料 
小宮太郎《垂直で水平な風景(を撮る)》 2016 / 写真
小宮太郎《垂直で水平な風景(を撮る)》 2016 / 写真
丸橋光生《Behind The Strokes》 2015 / ミクストメディア
丸橋光生《Statues and Rods》 2014  オブジェ、棒       

諫山元貴 / ISAYAMA Genki

1987年大分生まれ。2009年京都造形芸術大学美術工芸学科総合造形コース卒業、2011年広島市立大学大学院芸術学研究科博士前期課程現代表現領域修了。最近の主な展覧会に、「Sights and Sounds: Japan」(The Jewish Museum、ニューヨーク、2016)、「ポスト・インターネット・アート−新しいマテリアリティ、メディアリティ」(ギャルリ・オーブ、京都、2015)、「群馬青年ビエンナーレ 2015」(群馬県立近代美術館)、「UTOPIA–何処にもない場所–」(ART BASE 百島、広島、2012)。2010年「ULTRA AWARD 2010」(京都)にて最優秀賞を受賞。2014年にはベルリンのStudio Haegue Yangのレジデンスプログラムに参加した。近代的思考によって作られたものが崩壊していくイメージを、映像作品や鋳造技法を用いた立体作品などでつくる。

小田原のどか / ODAWARA Nodoka

1985年宮城生まれ。2010年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了、2015年筑波大学大学院人間総合科学研究科博士後期課程修了。最近の主な展覧会に、「白川昌生・小田原のどか『彫刻の問題』」(愛知県立芸術大学サテライトギャラリー、2016)、「ゲンビどこでも公募展」(旧日本銀行広島支店、2015、池田修賞受賞)、「群馬青年ビエンナーレ 2015」(群馬県立近代美術館、優秀賞受賞)、「still moving」(元・崇仁小学校、京都、2015)、「個展:小田原のどか作品展《↓》」(同志社女子大学、2014)」。「彫刻」について考えを巡らせることを通して作品制作を行う。2008年から下向きの矢印記号を彫刻として提示する『↓』シリーズを継続的に発表、2011年から長崎市松山町にかつて存在した原爆投下地点を示す矢羽型の標柱についての調査に取り組む。

小宮太郎 / KOMIYA Taro

1985年神奈川生まれ。2016年京都造形芸術大学大学院芸術研究科芸術専攻(博士)修了。2014年台北国際芸術村にて滞在制作。最近の主な個展に、「After living -時代錯誤異物」(182artspace、台南、2015)、「ざんぞーだよ」(ギャラリー門馬&ANNEX、札幌、2015)、「ふたおもて」(渋谷ヒカリエ、東京、2013)」。主なグループ展に、「VvK Programm 16 中山和也 キュレーション『赤い車が走り抜ける』」(KUNST ARZT、京都、2016)、「安部公房へのオマージュ/写真とヴォイアリズム」(G/P gallery 東雲、東京、2016)、「ヒロシマオーヒロシマフクシマ 」(旧日本銀行広島支店、2012)。「空虚(Void)を組み立てる」をテーマに鏡像や残像などの現象を扱った立体作品、サイトスペシフィックなインスタレーションなどを制作。

丸橋光生 / MARUHASHI Mitsuo

1982年京都生まれ。2010年広島市立大学大学院芸術学研究科彫刻専攻修了。主な展覧会に、「対馬アートファンタジア2016」(厳原地区各所、対馬、長崎)、「Gorgissimo!」(Réunion、チューリッヒ、スイス、2015)、「TSUSHIMA ART FANTASIA in BUSAN」(Catoric Center Gallery、釜山、2015)、「SUNDOWNER」(CIRCUIT21、テキサス、アメリカ、2014)、「建物の生態」(旧日本銀行広島支店、本川小学校平和資料館、広島逓信病院旧外来棟被爆資料室、2014)、「個展:プラスティック調教」(広島芸術センター、2011)。2011年「第2回Gセレクションアワード準グランプリ」受賞。近年は「視覚の平面性」をキーワードに、絵画や写真の裏側から見ているかのような光景をつくり出す作品や、高解像度モニターを用いた作品などを制作。

基本情報

会期

2017年3月11日(土)-5月21日(日)
*会期中、展示替えを行います
(1) 3月11日(土)-4月10日(月) (2) 4月15日(土)-5月21日(日)

開館時間

11:00-18:00(最終入館は17:30)

会場

アートギャラリーミヤウチ 2・3F展示室

休館日

火・水曜日、4/13-14(但し5/3は開館)

観覧料

200円(100円)
( )内は学生、10名以上の団体料金。高校生以下または18歳未満・各種障害者手帳をお持ちの方は無料

主催

公益財団法人みやうち芸術文化振興財団

助成

公益財団法人エネルギア文化・スポーツ財団

開催レポート

artscapeレビュー
2017/04/29(土)(高嶋慈)
テレポーティング・ランドスケープ
『artscape』2017年5月15日号
http://artscape.jp/report/review/10114905_1735.html